2024年度合格者座談会
努力を重ね、全力で中学入試に挑んだ受験生から、嬉しい便りが届いています。目標をかかげ、その実現に向けてがんばってきた「道のり」について、首都圏の難関中学に合格した受験生と、それぞれの家族のみなさんに聞きました。 ※この記事は、2024年2月28日の朝日小学生新聞に掲載されたものです。
2024年度啓明館 合格者座談会 出席生徒・保護者の方
聖光学院中学校 合格
脇本 優さん (母)絵理さん
桜蔭中学校 合格
三山 里彩さん (母)勇一さん
開成中学校 合格
飯田 隆誠さん (母)友紀さん
入試を振り返って
入試当日と、合格発表を確認したときのようすや感想を教えてください。
脇本優さん:
聖光学院中の入試当日は、とくに緊張しませんでした。試験は「できた」と思いましたが、自信をもてたのは15分間ぐらい。まわりの受験生も同じように話していて、すぐに不安になりました。
合格を知ったのは翌日です。併願校の試験が終わったあと、校庭で待っていた母が教えてくれました。
脇本さん(母):
オンラインの合格発表は午前9時からでしたが、私はその30分ほど前から涙とふるえがとまらない状態でした。わが家は高1の長男も中学から聖光学院に通っており、兄弟を同じところに通わせたいという思いがありました。私は極度に緊張していたようです。
スマートフォンで「合格」の画面を見たときは、とにかくほっとしました。優に伝えたときも私はまだ泣いていましたが、本人はシーンと無反応で……。
優さん:
試験で疲れ切っていたんです。夜になってから、ようやくうれしさを実感しました。
三山里彩さん:
私も桜蔭中の入試の朝はリラックスしていました。がんばって勉強してきたので、自信たっぷりに父と会場に向かいました。でも試験は理科と算数が難しかった!気持ちが落ちこみ、とぼとぼと帰宅しました。
発表は翌日の午後、家で母と高1の姉といっしょにスマートフォンで確認しました。「おめでとうございます」の画面を見て、母と姉は号泣、私はびっくり。なかなか信じられず、実感できたのは3日後でした。
三山さん(父):
勤務中に「そろそろ発表だな」と思っていたら、スマートフォンに合格発表の画像がとんできました。試験後の娘のようすを見ていたので、私の感想は「まさか……」。放心状態でしたね。その気持ちはすぐにうれしさへかわり、別室に移動して家族に電話をかけました。
飯田隆誠さん:
ぼくは開成中の入試を受けるのが楽しみで、前日は夜遅くまで眠れませんでした。当日は少し寝不足のまま試験を受けましたが、手ごたえを感じられる出来でした。
でも2日後に合格を知ったときは、うれしいというより、ふしぎな気持ちになったんです。別の学校の不合格を知ったあとだったので、開成中の結果にも自信をなくしていました。
飯田さん(母):
息子が「えっ?」と驚いた表情を見せたことが印象的でした。ずっと不安に思っていたのでしょうね。
開成中の合格は、併願校の試験の待機中にカフェで確認しました。スマートフォンをもつ手がふるえましたが、なんとか操作して画面に息子の受験番号を見つけました。何度も見直し、仕事中の夫にも連絡して確認し合い、ようやく確信したときは人目もはばからずに泣いてしまいました。
息子へは素直に「おめでとう」と、一言だけで合格を伝えました。
志望校を決めるまで
第1志望校はどのようにして決めましたか。
里彩さん:
桜蔭中を第1志望校に決めたのは6年生の秋です。文化祭に行き、とても楽しい体験をしたことが大きな理由でした。縁日のヨーヨーの出し物があったり、どの部も熱心に活動について発表したり。活気のある雰囲気が、別の機会に目にした静かな授業風景と対照的でした。「メリハリがあっていいな」と感じ、このような環境で勉強をがんばり、学校生活を送りたいと思うようになりました。
三山さん(父):
娘は桜蔭中の文化祭を見て、興奮して帰ってきました。いくつもの学校の見学会や説明会に参加したのですが、桜蔭中の校風にいちばんひかれたようでした。
桜蔭中には理数系の教育に強い難関校というイメージがありました。高い目標であることにちがいはありませんが、娘の受験に前向きにかかわっている妻は全力で応援してきました。私は一歩引いてアドバイスをする役割でしたが、算数が好きな娘は桜蔭中に向いていると信じ、迷わず応援することに決めました。
優さん:
ぼくが聖光学院中を意識しはじめたのは2年生のときでした。兄が受験用に集めた資料をいっしょに見て好感をもったことがきっかけでした。
聖光学院中に入学した兄が毎日、楽しそうに登校するのを見て、さらに魅力を感じるようになりました。6年生になってから足を運んだ文化祭では、在校生の対応がていねいで、さらに印象がよくなりました。こうした発見が積み重なって聖光学院中を第1志望とする気持ちが決定的になりました。
脇本さん(母):
長男の楽しそうな姿を見てしまっては、聖光学院中以外の道は選べなかったかな……という印象です。部活動はもちろん、学校の行事でも生徒同士のきずなが深まるような活動がたくさんあります。兄の学校生活を通して校風にふれ、自然と志望するようになったようです。
夫も「ここなら安心」と信頼を寄せていたので、家族全員で聖光学院中へのチャレンジを応援しました。
隆誠さん:
ぼくはなんでも高いレベルのなかで活動をしたいという気持ちを強くもっています。中学や高校の生活で、その希望がかなうのは開成中だと考えました。第1志望校として意識するようになったのは、4年生の後半ごろだったと思います。
校舎が新しくなったことも魅力的でした。「きれいな校舎っていいな」と思ったんです。
飯田さん(母):
親として開成中を意識したのは、息子が4年生で塾に入った直後です。塾の成績を見て、漠然と「めざせるかもしれない」と考えたことが契機になりました。
6年生になって説明会に参加すると、興味深い情報を得られました。開成中では修学旅行の行き先を生徒たちで決められるというのです。学年ごとの旅行も毎年、催されるという話もありました。息子はこういった活動が大好きなので、開成中をめざす気持ちにワクワク感が加わりました。在校生が親しみやすかったことも「入りたい」という気持ちを後押ししたように思います。
家族のかかわり方は
受験期における家庭内のコミュニケーションについて、心がけていたことを聞かせてください。
飯田さん(母):
私が心がけたのは適切な距離感です。4、5年生のころは楽しく勉強できる環境にしようと、学習の計画づくりにも積極的にかかわりました。塾の宿題を管理したり、ときにはゲームなどで息抜きをすすめたり。6年生になってからは過干渉にならないことを最優先に考え、すべてを本人に任せるようにしました。
「親子でバトルをすると時間がもったいない」。塾の先生からこうアドバイスされて「その通りだ」と思い、気になることが目についても胸のうちに。声かけは体調管理のことだけに徹しました。根底には努力をつづける息子をリスペクトする気持ちがありました。
4年生の妹は勉強の合間のおしゃべりで、夫は男同士の相談ごとなどで、息子をリラックスさせてくれていました。
隆誠さん:
両親には楽しく勉強できるような環境をつくってくれたことに感謝しています。妹とは塾の先生のものまねをしたりして、おもしろい時間を過ごせました。
脇本さん(母):
夫は塾の送り迎えや勉強の合間のキャッチボールで、受験生の優と触れ合っていました。成績などに対して一切、口出しはありませんでした。
私がいちばん大事にしていたのは、塾のお弁当づくりです。勉強を教えることはかなわないので、お弁当で応援しようと考えました。メニューはにぎりずしからラーメンまで……。あたたかいものはあたたかいまま食べてほしかったので、休み時間に合わせて「配達」しました(笑い)。兄弟を合わせて通算すると4年間、このルールを守ったことは自分でも「がんばったな」と思います。
長男は自分の経験をもとに、優や私に勉強についてアドバイスをしてくれました。精神的に心強かったですね。
優さん:
第1志望校に合格できたのは家族のおかげだと思っています。母のお弁当は毎回楽しみでした。いちばんうれしかったのはおすしかな。
三山さん(父):
わが家がめざしたのは、雰囲気を明るくするような前向きのコミュニケーションです。妻とポジティブな声かけを心がけました。たとえば娘が模擬試験で思うような点数を取れなくても「この模試がゴールじゃないからね」といった具合。気持ちを切り替えることをうながすようにつとめました。熱心に娘を支えた妻は、はげましの言葉もたくさんかけていましたね。受験の期間でも家族がそろったときは録画したテレビ番組を楽しむなど、ワイワイできる時間をつくりました。
里彩さん:
母にほめてもらうとうれしいんです。だから母に「がんばったね」と言われたときは素直に喜びました。勉強に乗り気ではないときは、姉におしゃべりにつきあってもらいました。気分転換ができて助かりました。
効果的な学習法を紹介
工夫した勉強法や、効果を実感した取り組みはありますか。
隆誠さん:
ぼくは受験勉強をはじめた4年生のころ、国語のテストを受けると解答を父に見直してもらっていました。そのときに解き方のポイントも解説してもらいました。国語の基礎的な力は、こうした父との勉強で身についたと思います。5年生からは父にたよらず、自分で見直せるようになりました。
算数では「この単元は苦手かも」と感じたら、とにかくたくさんの問題を解きました。
里彩さん:
私の課題は、国語の問題を解くスピードをはやくすることでした。字をはやく書くことにも気を配りながら練習を重ねました。
塾の勉強では復習が大切です。実は4、5年生のころは、それほどしっかり取り組んでいませんでした。6年生になってから意識して復習に力を入れるようにしました。そこで復習は本当に効果があると実感しました。
優さん:
ぼくが自信をもって紹介できる取り組みは「なんでもノート」づくりです。母の発案でリビングにノートを置き、気になったことを書きとめるようにしました。
テストでまちがえた問題やはじめて知った語句、新聞やテレビで「これはどういう意味だろう?」と思って調べたことなどを1冊のノートに書きこみました。これを試験会場までもっていき、直前まで復習しました。すると、実際に受けた入試で、このノートの知識から3問が出題されました。みなさんにもおすすめしたいです。
「次」の受験生たちへ
塾や過去問の活用法について伝えたいことはありますか。
隆誠さん:
塾の先生は知識事項や用語をおぼえやすいようにおもしろく説明してくれるので、聞きのがさないようにしましょう。
里彩さん:
授業中に先生と会話をしたり、質問をしたりすると、苦手科目の授業でも楽しくなりますよ。
優さん:
過去問の演習でなかなか得点がのびなくてもくじけないでください。ぼくの場合、直前の1月中旬から急に点数が取れるようになりましたから。
来年度以降に受験するみなさんに対し、メッセージやアドバイスをお願いします。
優さん:
中学受験は勉強した分だけ「合格」に近づけるという結果が返ってきます。つらい思いをするほど、受験が終わったあとの楽しさが大きくなります。つまり、いいことしかありません。これからの勉強をがんばってください。
脇本さん(母):
「男の子は中学に入ると親から離れてしまうだろうな」と男の子2人の親である私は思っていました。小学生のうちに、受験という目標に向かって息子たちといっしょにがんばれた経験が、本当に貴重であったと実感しています。これから中学受験をめざす家族のみなさんは、この数年間を大切にしてください。
里彩さん:
伝えたいことは三つあります。①復習をちゃんとやらないと大変なことになるので気をつけてください。②受験勉強は楽しく取り組むことをめざしましょう。がんばってつづければ、楽しくなるときがきます。③努力は裏切りません。目の前のことに集中してください。
三山さん(父):
受験は結果よりもプロセスに意味があります。膨大な量の問題をコツコツ解く数年間はつらそうに思える時期もあります。でも、その過程で娘の成長をダイレクトに感じることができました。親にとっても意味のある体験になったと思います。
隆誠さん:
塾に通う受験生は先生をリスペクトしてください。先生の言葉を信じて勉強をこなしていけば、きっと結果が出るはずです。
飯田さん(母):
息子と同じ意見になりますが「塾の先生をリスペクトする」。この姿勢は中学受験に向き合ううえで本当に大事であったと感じています。私たちは勉強をがんばっている子どもたちもリスペクトしていました。塾と子どもを信じ、楽しみながら中学受験に向き合ってほしいと思います。